2011年12月31日土曜日

アップルを創った怪物

Jobs本に技術の話が少なかったので、続けて読んだのがこちら。個人的にはJobs本よりこっちの方が面白かった。



HP時代、朝10時と午後2時にコーヒーとドーナツがでて自然にみんなが1箇所に集まる仕組みができていた、とか、アップルIの設計をHPの上司に見せたところHPでは扱わないと言われた話(まさにイノベーションのジレンマ)とか、もう30年以上前なのに全く古さを感じません。臨場感があってとても楽しい。
エンジニアっていうのは、どの時代でもどの国でも共通なのだなと思いました。


引用: 第20章 p413
「グレースケールで物事を見る。すべてに対してオープンに。」

最近は情報量が多いので、「あの製品はすごいがあの製品は駄目だ」「あの技術はもう終わった」などなど、物事を単純化して白黒2値で判断しがちです。でも、それはエンジニアの態度では無い。オープンに、フラットに、物事をグレースケールで判断できるようになりたいと思いました。


全編通して思うのは、子供の頃に適切な教育を与えることがとても重要であるということ。小学生くらいのお子さんがいらっしゃるご両親(私だ)は読むと良いと思います。

Steve Jobs

今年最後のblogはこの本(ともう1冊…)について書きます。発売日に購入して1ヶ月くらいかけて読みました。



デザインやUXに対するこだわりがすごいのはもちろんですが、むしろそれ以上に「優秀な人材」に対するこだわりがすごかったのではなかろうか、と思いました。

引用: 11章 p203

「優れた人材を集めれば甘い話をする必要はない。そういうものだと僕は学んできた。そういう人は、すごいことをしてくれると期待をかければすごいことをしてくれんだ。特A+のプレイヤーはそういう人同士で仕事をしたがるし、Bクラスの仕事でもいいと言われるのを嫌がる。そう、最初のマックチームは教えてくれた。そのチームのメンバーなら誰でも、苦労しただけのことはあったと答えるはずだ。」

これ、すごくよくわかります。優秀な人が集まっているチームは、上司やリーダーがなにもしなくてもどんどん結果が出る。(むしろ上司は何もしない方が良いくらい…)
でも、中に一人でも残念な人がいると、とたんにチームの雰囲気が悪くなることが多いです。マネジメントのパワーのほとんどが、数人の残念な人の対策に使われることもしばしばです。

よく、何故日本にはAppleのような企業が生まれないのか、という質問がされますが、実は「優秀でない人」を切ることのできない人事制度に起因するところが大きいのでは無いか、という思いを強くしました。


あと、意外だったのは、今後の先進国の競争力が中国の工場をまわすための製造技術にあると考えていたこと。

引用: 40章 p395 オバマ大統領に対して言った言葉

「アメリカは3万人の製造技術のエンジニアを育てなければならない」
「アップルは中国の工場で70万人の作業員を雇っており、それだけの人数をサポートするには3万人のエンジニアを現地に派遣しなければならない」

ジョナサン・アイブも中国の工場立ち上げに3ヶ月現地に詰めたという話も載っていました。日本企業の生き残り云々という文脈で、いまだに「高品質の製品を作るために日本の工場で生産する」などという話を聞く事がありますが、どうしても危機感を感じてしまいます。


全体を通してちょっと残念だったのは、技術の話が少なかったこと。ポイントポイントでなぜJobsはその技術を選択したのか、みたいな話をもっと読みたかった。

と言うことで、続けてWozの本を読みました。次号。