2009年3月3日火曜日

服従の心理 アイヒマン実験



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読み始めた日: 2009-02-05
読み終わった日: 2009-03-02


「人間への刺激が記憶に与える影響を調べる」というウソ実験が舞台。
参加するのは、(本当の)被験者A、(サクラの)被験者B、実験指示者Cの3名です。

実験指示者Cは、被験者Aに対して、以下の指示を出します。
・Aは、Bに対して、言葉の記憶に関する問題を出す。
・出題後、Aは、Bが問題に誤答する度に、電気ショックを与える。
・出題と電気ショックは、Cが止めと言うまで繰り返す。

電気ショックの強さは、被験者Bが間違える度にどんどん強くするように指示されます。
果たして、このような状況で、AはどこまでひどいことをBに対して行うか、というのが実験の趣旨。

本の前半は、基本的な実験の説明と結果が淡々と語られ、「思ったよりも強いレベルまで電気ショックを与えるなぁ」くらいの感想しか無くて退屈なのですが、
後半になり、
・AとBの間に身体的接触を伴う(電気ショックを与える板にBの手を押しつける)
・Bがうめき声を上げる
・Bが女性になる
・Bが罰を要求する
・Cが別の人と交代する
・Cが2人になり、それぞれ別の指示を出す
・環境が実験室から普通の部屋に変わる
等のバリエーションが出てくると、俄然面白くなります。
(結果は書きませんので、興味のある方は是非読んでみてください。)

人間は、権威からの命令によって緊張が生じると、その緊張を解消しようとします。
緊張を解消するためには、権威の指示に従わず、関係を見直す(不服従)ことが最後の目的になるのですが、
実験の結果からは、
・否認(都合の悪いことを都合のいいように解釈する)
・ごまかし(指示に従うように見せて、指示とは異なることを行う)
・責任の放棄(自分に責任がないことを確認し、人のせいにする)
が良く見られ、
・不同意(賛成しないことの意思表明)
・不服従(権威との関係の見直し)
には至りにくいそうです。
また、権威にある人が無能であればあるほど、緊張はより大きくなるようです。
人間は、本来、如何に権威に弱いか、権威に服従しやすいのかがよくわかります。
(服従と同調の違いについても説明されています。)

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最後にちょっとだけ、ナチスドイツのユダヤ人迫害や、ベトナム戦争のソンミ村虐殺事件の話が出てきますが、
果たして、自分がその立場にいた場合、権力に抗ってでも人を傷つけないという選択ができたかどうか、自信がありません。
普通に会社で仕事している中でも、人のせいにしたり、都合のいいように解釈したりして、結果的に間違った行いをしていることが多々あると思います。
本文中でも、昇進というシステムは会社の中で服従を強める、とあります。

最後にあった、ハロルド・J・ラスキという人の、
「文明とは、何よりもまず、不必要な苦しみを人に与えないことを意味する。
この定義に従えば、無思慮に権威の命令に従う者は、文明人と自称することは許されない。」
という言葉が重かったです。なかなか私も文明人にはなれそうにありません。
でもそのことに気がついただけでも、この本を読んで良かったと思います。

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